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相殺で債権回収!?その方法とは

はじめに

「相殺」は法律用語ですが、日常でもよく使われる言葉です。逆のベクトルを持つ、同じ性質の物を打ち消し合うといったような意味で使われますが、本来の意味も概ねその通りですので、相殺の機能はイメージしやすいと思います。

それでも、「相殺」によって「債権回収」するというのは、あまりイメージが湧かないかもしれません。

しかし、場合によってはこの相殺が債権回収の肝になりうるのです。

今回の記事では、相殺の概要と、その方法などについて説明していきます。

相殺とは?その概要とメリット

相殺とは、自分と相手が同じ種類の債権を持っている場合に「相殺します」と言って意思表示することで、自分の債権と相手の債権を打ち消し合うという法律行為です(民法505条〜512条)。

当然、自分の持っている債権が相手の債権より少額の場合には、自分の持っている債権額の分だけ相殺で打ち消せることになります。

相殺には相手の同意は不要なので、条件さえ揃えば自分だけの判断で行うことができるのです。

 

債権回収の観点で重要なポイントは、相手が破産した場合にも相殺が使えるということです。

普通であれば、債務者である個人が破産したり会社が倒産したりすると、その債務者は勝手に債務を弁済できなくなります。残っている債務者の財産(債権も含みます)は破産管財人に管理されることになるのです。そして、その財産は換価され、担保を持たない債権者らに対して、平等に弁済に充てられることになるのです。

 

しかし、この場合も、債権者は相殺による債権回収を行うことができます(破産法67条1項)。

つまり、債務者の持っている自分に対する債権を打ち消すという形で、他の債権者に優先して債権を回収することができるのです。

 

さらに、破産手続開始時に自働債権の弁済期が到来していない場合でも、相殺することが認められています(破産法67条2項)。

ただし、破産手続開始の申立てがあった後で破産者に対して債務を負った場合は、これを受働債権とした相殺ができませんので気をつけましょう(71条1項4号)。

この場合でも、破産手続開始の申立てがあったことを知らなかったならば相殺できる可能性があります。

債務者が破産してしまうとなると、担保のない債権の全額回収は難しいのが現実ですが、この相殺の担保的機能を上手く使ってできるだけ損失を小さくしたいですね。

 

さらに、自分の債権が消滅時効にかかってしまっても、相殺の場面では使うことができる場合もあるのです。もちろん、使える場面はかなり限られています(後で詳述します)が、大事な債権をうっかり消滅時効にかけてしまった人にとっては耳寄りな話と言えるでしょう。

相殺のこのようなメリットを活かすことができるのはどのような場合なのでしょうか。以下で相殺の方法や注意点を説明していきます。

相殺の方法

 先ほども述べたように、相殺は相手に対する意思表示によってすることができます。

口頭による意思表示でも有効に相殺できますが、後に裁判になってしまった場合に、口頭で言ったことを証明するのはとても困難です。そのため、相殺の意思表示は内容証明郵便等、意思表示を行ったことが証拠として残る形で行うことをおすすめします。

 

また、契約を締結する際に、契約の中に「相殺予約」の条項を入れておくことも可能です。

これは、一定の条件が発生したり、期限が来たりした場合に互いの債権を自動的に相殺する(もしくは、弁済期前であっても一方当事者の意思表示で相殺できることにする)という内容の条項です。

いちいち「相殺します」と相手方に意思表示をしなくても済むので、簡易な債権回収が可能となります。

有効に相殺をするために何が必要?

相殺はいつでも有効にできるわけではありません。

相殺が有効になるためには、以下の各要件が揃っていることが必要です。

 

お互いに債権を有していること

これは先ほども述べたとおりです。

相殺に使用する自分の債権を自働債権、相殺によって打ち消される相手の債権(自分からみた債務)を受働債権と呼びます。

 

その債権が「同種」の債権であること

この「同種」というのが少しわかりづらいかもしれませんが、とりあえず金銭債権同士であれば「同種」の債権と言えます。

例えば、敷金返還請求権と貸金返還請求権は、一見違う種類の債権だとも思えますが、結局は両方とも金銭債権なので同種の債権に当たります。

金銭債権でない債権とは例えば、肖像画を描いてもらう債権や、

 

当事者が会社同士の場合は、お互いに有する債権のほとんどは金銭債権に当たると考えられるため、多くの場合はこの要件は充たされることになるでしょう。

 

また、手形債権を自働債権として通常の金銭債権を相殺することもできます。そしてその逆も然りです。

ただし、注意すべき点として、手形金債権を自働債権として相殺しようとする場合で、かつ自働債権である手形債権より受働債権の額が大きいときには、相手方に手形を交付しなければならないということが挙げられます。この交付がなければ、相殺は有効にならないのです。

 

手形を交付しなくても相殺が有効になるとしてしまうと、相手方としてはその手形を証拠として再度手形金を請求されてしまうおそれがあるため、手形の交付を要求することには相手方の利益を守る意味があります。

 

一方で、自働債権である手形債権より受働債権の額が小さい場合には、手形を交付する必要はありません。相殺に使われなかった手形金の残額を回収するために手形が必要になるからです。

この場合には、一応手形を相手に見せた上で、「手形金のうち○○円は相殺済みです。」という内容の書面を交付することになるでしょう。

 

すでに債権の弁済期が来ていること

相殺が有効になるためには、自働債権の弁済期が来ていることが必要です。

なぜなら、相手は弁済期が来るまでは支払をしなくても良いという利益(これを「期限の利益」と呼びます。)を持っているので、これを相殺によって一方的に無くすわけにはいかないためです。

 

しかし、相手方の信用状態が危うくなった場合でも、自働債権の弁済期が来るまでは相殺できないとなると、相殺の担保的機能を活かしきれないことになります。

このような場合にもすぐ相殺できるようにするため、「一方当事者の会社更生や民事再生の手続が始まった場合には、その当事者の債務の弁済期が到来したことにする」といった内容の「期限の利益喪失条項」をあらかじめ契約の中に入れておくという手があります。

こうすることで、信用状態が危うくなると、「自働債権の弁済期が到来している」という要件が自動的に充たされることになるのです。

 

一方で、受働債権については弁済期が来ていなくても構いません。

相殺の条文には「双方の債務が弁済期にあるとき」(民法505条1項)と書いてあるため、一見、これは条文の内容に反していると思われそうです。

しかし、受働債権の期限の利益は相殺する側の利益なので、これを自分で放棄する分には構わないと解釈されているのです。「早く払いたければ払っても良いよ」ということです。

 

相殺禁止に当たらない

法律や契約によって、相殺が禁止されている場合もあります。代表的なのは以下の場合です。

 

①契約によって相殺を禁止している場合

契約によって、お互いに相殺することを禁止することもできます(505条2項)。

契約を締結する際に、契約書の条項に相殺禁止条項を入れている場合もあります。

 

②不法行為によって生じた損害賠償債権を受働債権とする場合

自分の債務者に対して不法行為を行ってしまい、その結果、損害賠償債務を負ってしまうこともあるかもしれません。

このときに、自分が最初から持っていた債権と損害賠償債権すれば良いと思うかもしれませんが、これは法律で禁止されています(民法509条)。

その理由は、不法行為による損害を補填するための損害賠償金は、医療費や修繕費などに充てられるものでもあるで、現実に金銭として給付される必要があるためです。

また、債務者に債権を弁済するだけの十分な資力がないと分かると、「損害賠償債務と自分の債権を相殺すれば良い」と思って債務者に不法行為を働く債権者が出てくるおそれがあります。損害賠償債権を受働債権とした相殺の禁止にはこういった不法行為が発生するのを防ぐ意味もあるのです。

 

③法律によって差押えが禁じられた債権を受働債権とする場合

法律によって差押えが禁止された債権には、給料債権の一部や退職金の一部、生活保護費、国民年金や私的年金、扶養請求権などが挙げられます。

これらの債権を相殺によって消滅させてしまうと、債務者の生活が成り立たなくなってしまう可能性が高いため、債務者保護のためにこれらを受働債権とした相殺は禁止されているのです。

 

④支払の差止めを受けた債権を受働債権とする場合

支払の差止めを受けた債権を受働債権とした相殺は禁止されています。

支払が差止められたのに、相殺することは可能としてしまうと、差止めの意味がなくなってしまうためです。

 

相殺するためには、以上の①〜④に当たらないことが必要なのです。

 

 

以上で説明してきた要件、つまり、お互いに債権を有していること、同種の債権であること、弁済期が来ていること、そして相殺禁止にあたらないこと、という要件が揃って初めて、相殺が可能となります。

この要件が全て揃った状態を、一言で「相殺適状」と表現します。

 

また、相殺の効果は相殺適状が生じた時点に遡って生じるということを押さえておきましょう。

相殺適状が生じた1年後に相殺の意思表示をしたとしても、相殺の効果は1年前から生じていたことになるのです。

そのため、相殺された分の債権につき、この1年の間の遅延損害金は発生していないことになるといった効果が生じます。

相殺するときは以下のことに注意しましょう

晴れて相殺適状であることが確認できたら、あとは相手方に対する意思表示さえすれば相殺することができます。

 

ただし、まだ注意すべき点はあります。

 

相殺には条件・期限はつけられない

まず、相殺には条件(「今シーズンでジャイアンツが優勝したら相殺する」等。)や期限(「○月×日に相殺する。」等)を付けることはできないので注意しましょう。

 

自働債権として使えない債権があります

相殺適状にあっても、実際上、自働債権として使えない債権もあります。

催告の抗弁権のついた債権(民法452条)、検索の抗弁権のついた債権(民法453条)や、同時履行の抗弁権のついた債権(民法533条)がこれに当たります。

 

それぞれについて一応、一言で簡単に説明しておきましょう。

催告の抗弁権とは、保証人の持つ抗弁権で、「自分に請求する前に債務者本人に請求してください」と債権者に対して言うことができるという権利です。

検索の抗弁権も、同様に保証人の権利で、債務者に資力があって、かつ強制執行することが簡単であると保証人が証明した場合には、「まず債務者の財産から債権を回収してください」と言うことができる権利です。

 

同時履行の抗弁権とは、お互いに債務を負うような契約(売買契約などがこれに当たります。)から生じた債権を、自分が債務を履行せずに行使しようとしても、相手は「あなたも債務を履行しないと私も履行しません。」と言えるという相手側の権利です。

 

こういった抗弁権が付いたままの債権は、これらを除去しなければ使うことができません。それは相殺の場面でも同じであるということです。

 

どの受働債権から相殺するか指定しましょう

相殺しようとする相手の債権が複数ある場合もあるでしょう。

自働債権が全ての受働債権を弁済するのに足りるときは、何も問題ありません。

しかし、自働債権が全ての受働債権を弁済するのに足りないときには、どの受働債権を相殺するかを相殺する側が指定することになります(民法512条、488条1項)。

 

この指定がない場合には、相手方がどの受働債権から相殺されるべきかを指定することができます。

この指定された順番に満足いかない場合は、相殺する側は直ちに異議を述べなければなりません(民法512条、488条2項)。

 

さらに、当事者のどちらも、相殺される受働債権を指定しない場合には、法律で定められた順番で相殺されていくことになります(民法512条、489条)。

 

具体的には、

弁済期にある債権

→債務者のために弁済の利益の大きい債権

→弁済期が先に到来したorすべき債権

→それでも決まらない場合は、各債権の額に応じて等しい割合で弁済

 

という順番で自動的に相殺されていきます。

 

また、受働債権の元本の他に費用や利息の債権がある場合には、費用→利息→元本の順に相殺されます(民法512条、491条)。

 

消滅時効にかかった債権も使えるかもしれません。

債権の時効がきてしまったと嘆いている人に朗報です。自働債権が時効にかかったとしても、時効にかかる前に相殺適状が生じていれば、相殺によって債権を回収することができるのです(民法508条)。

 

ただし、最高裁が平成25年2月28日に少し厳しい判断をしています。

最高裁は、相殺適状になったというためには「受働債権につき、期限の利益を放棄することができるというだけではなく、期限の利益の放棄又は喪失等により、その弁済期が現実に到来していることを要する。」としたのです。

 

つまり、受働債権の期限の利益はいつでも放棄できますが、時効前に相殺敵状になっていたというためには、時効前に「期限の利益を放棄します」ということをハッキリ言っておかなければならない、ということです。

消滅時効完成後の相殺を見越してそのようなことをする人はほとんどいないでしょう。そのため、消滅時効にかかってしまった債権を自働債権として相殺することはかなり厳しくなってしまったと言わざるを得ません。

 

まとめ

相殺は「逆のベクトルを持つ、同じ性質の物を打ち消し合うといったような意味」と最初に説明しましたが、実際に相殺しようとすると、多くの制限や注意点があって、そんなに簡単なものでないことがわかります。

相殺予約や相殺禁止の条項を契約書に入れる場合や、法律の規定に則って相殺しようとする場合には、弁護士に相談するようにしましょう。

 

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