債権の回収を失敗しないための契約書の作成術。弁護士が実務の観点からポイントを解説

■債権回収を失敗しないために気をつけたい契約書のポイント5つ

 

債権の回収トラブルに発展させないためには、どんなことに気をつければいいのでしょうか。債権トラブルを防ぐために「契約書」に的を絞って解説します。契約書は債権トラブルになった時に有力な証拠になる存在です。日本の法律は口約束も約束のうちであるというスタンスです。ですが、口約束だけでは証拠力に乏しいのが現実です。大きな取引になればなるほど、契約書をしっかりと整えることが求められます。

 

ただ契約書を作成すればいいというわけではありません。契約書の不備から債権トラブルに発展するケースもあります。ポイントをおさえられていないために、契約書があっても債権の回収が困難になるケースもあります。トラブルを防止し、強い証拠力を持つ。さらに、債権の回収が困難になることを防ぐ。債権の回収では、その3つの兼ね備えた契約書こそが必要になるのです。

 

債権の回収を失敗しないためには、5つのポイントに注意して契約書を作成することが重要になります。

 

■契約書は契約内容が明確に確認できることが債権トラブル防止の鍵

 

債権であることを契約書の中で明確・明瞭にしておくことが重要です。明確性が欠けていると、債権の回収という段になった時に、債務者から贈与を主張されてしまうといったトラブルに発展する可能性があります。

 

・債権の発生原因

・債権発生の年月日

・債権の内容

・「売る」や「貸す」などの明瞭かつ明確な言葉遣い

・「渡した」などの贈与と債権の判断が不明確になる言葉は避ける

 

明瞭・明確であることは、債権のトラブルに発展させないための契約書の基本になります。さらに、契約書を作成した段階で弁護士にリーガルチェックを受けるなど、債権の回収トラブルを未然に防ぐように努めることが重要になります。

 

・債権者に有利な場所で訴訟ができるように備えておく

 

法律のトラブルは、トラブルの性質によってどの裁判所が管轄するかが変わってきます。最寄りの裁判所で必ず手続きができるわけではありません。

 

たとえば、相続や離婚などの家庭の法律トラブルは家庭裁判所が管轄しています。管轄外の裁判所を利用したいと希望したとしても、叶いません。管轄に添って裁判所を利用する必要があるのです。これは、債権の回収トラブルでも同じです。債権トラブルにおいても、裁判所を利用する場合は管轄を確認することが重要になります。

 

債権トラブルの管轄は2つあります。

 

・債務者の住所地にある簡易裁判所または地方裁判所

・義務履行地(債務の弁済場所)の簡易裁判所または地方裁判所

 

以上の2つの裁判所が債権トラブルを管轄する裁判所になります。

 

140万円が1つの基準になり、140万円を超えると地方裁判所が管轄になります。140万円以下だと、基本的に簡易裁判所が管轄になります。簡易裁判所が管轄する案件になるのか、地方裁判所が管轄する案件になるのかは、140万円という基準を鑑みて判断します。利息や損害賠償金などは訴額に参入しないものと定められています。

 

たとえば、債務者は北海道に住んでいたとします。債権者は沖縄に住んでいました。債務者の住所地にある裁判所で訴訟を提起されてしまうと、交通費だけで莫大な金額になってしまいます。債権者が勝訴したとしても、交通費を計算に入れると「訴訟で勝って、結果で負けた」という事態になりかねません。酷いケースでは、債権を回収できても大赤字になってしまうことでしょう。これでは、債権の回収に成功したとは言えません。

 

契約書の段階で、義務履行地の裁判所で訴訟できるようにしておくことがポイントになります。債権者の居住地の裁判所を管轄裁判所にする合意や、債権を持参債務のかたちで定めるなど、裁判所の管轄で不利にならないよう契約書の段階で注意しておくことが重要です。

 

・取立債務と持参債務を使い分けることもポイントになる

 

契約書を作成するときは、債権が「取立債務」なのか「持参債務」なのかを把握し、使い分けることが重要です。契約する時に文言の意味を知っておくだけでなく、契約内容により使いやすい債務のかたちを反映させることが債権の回収をスムーズに行うためのポイントになります。

 

取立債務とは、債権者が債務者のところに取り立てに行く債務です。持参債務とは、債務者が債権者のところに持参する債務のことです。

 

取立債務にすると、「債権者が取りに来なかった」という債務者の責任回避的な言い訳に繋がる可能性があります。そこから債権トラブルが大きくなることも考えられます。債務者の言い訳を封じるために、契約では持参債務にするなど一工夫してみると良いでしょう。

 

・物的担保や人的担保を立ててもらう。あるいは担保を立てる義務を記載

 

債権の回収を成功させるためには、契約書の時点で物的担保や人的担保にも気を払っておくことが必要です。

 

物的担保とは、抵当権や根抵当権、譲渡担保などのことです。借金の際によく債務者名義の不動産に抵当権を設定したという話を耳にすると思います。これが物的担保の代表例です。

人的担保とは、保証人や連帯保証人のことです。債務者から債権の回収が難しくなった場合に、物的担保や人的担保を設定していれば、担保から回収をはかることができます。回収が難しくなった時の保険のようなものです。

 

契約書を整える段階で物的担保や人的担保の準備もある程度整っていることが望ましいと考えられます。しかし、特に人的担保の場合は、なかなかスムーズに準備が進まない可能性があります。

 

債務者が保証人や連帯保証人を立てることを嫌がることがあります。債務者が周囲の人に頼み難いという理由から、保証人や連帯保証人になってくれる人が見つからないこともあります。債務者が頼んだとしても、保証人や連帯保証人は怖いという理由から断られることも少なくありません。契約が成立し契約書を整える段階になっても担保の準備ができていない可能性があるのです。

 

これは、債権者にとってはリスクの高いことです。債権の回収ができない時のための保険が担保なのに、その担保が準備できないままなのです。人的担保の準備ができないことを理由に債務者がずるずると担保の設定を引き延ばし、最終的に担保なしの債権になってしまうかもしれません。

 

担保の準備がスムーズに進まないうちに契約を急ぐ場合には、契約書に担保設定の義務を明確にしておくという方法があります。債務者が人的担保や物的担保を立てない場合は契約解除できる旨や期限の利益を喪失する旨を定めておけば、債務者が担保設定を引き延ばすといった債権者にとってマイナスの行いを封じることができます。

 

・契約書で遅延損害金・解除・相殺・期限の利益に関する条項を定めておく

 

契約書の中で遅延損害金や解除、相殺、期限の利益について定めておくことで、債権の回収をより効果的に行うことのできる契約書になります。

 

期限の利益の条項は、分割払いの時に特に有効です。債務者が支払いを怠ると期限の利益を喪失し、債務の残額を一括で支払わなければならない旨を定めれば、債務者に心理的な圧迫感を与えることができます。債務者の自発的な返済にも繋がることでしょう。

 

取引上の債権の場合は一緒に相殺について定めておくと、期限の利益を喪失した直後に同種の債務で相殺することも可能です。相殺を使えば、返してもらえないかもしれない債権を綺麗に清算することもできます

 

支払いが遅れた時のために、遅延損害金の条項も定めておくとより効果的です。遅延損害金を法律の範囲内で高めに設定することにより、債務者の自発的な支払いを促すことができます。支払いが遅れることに対する危機感を持たせることもできるでしょう。

 

無催告解除の条項などを定めておくと、いざという時の切り札として使うことができます。

 

■基本的な事項だからこそ忘れられがちなポイントは連絡先

 

債権の契約書作成時に意外と忘れられがちな項目が「債務者の連絡先」です。

 

債権の契約書には、住所や電話番号といった基本的な連絡先を記載するのが基本です。弁護士のリーガルチェックでは、債権の契約書として必要な事項が記載されているかどうかや、契約書の法的な落とし穴(リスク)などを重点的にチェックすることになります。

 

法律に則った契約がなされているか、契約書自体が法に逸脱した内容になっていないかなどもチェックすることになります。その際、債務者の連絡先も記載があれば簡単に確認しますが、あまり気を払わないのが現実です。なぜなら、連絡先は契約書において絶対に必要な記載事項ではないからです。11つの契約書に対して弁護士が住所や電話番号を自分の足で確認するようなことは、まずありません。リーガルチェックの主旨からもズレてしまいます。

 

契約書に債務者の住所があれば、債権の支払いが遅れても手紙などで督促することができると思うことでしょう。残念ながら、住所や固定電話だけでは不十分です。連絡先が1つしかないと、その連絡先で連絡がつかない時に債権の回収が難航してしまいます。契約書には債務者の電話番号を書いてもらうことも多々あります。電話番号があれば債権の回収は問題なくスムーズに進むだろうと思うかもしれません。現実はそう甘くはありません。

 

契約書が古い債権の回収ケースでは、債務者が転居していたり、電話を解約したりしているケースもあります。借金逃れを画策する債務者の場合は、故意に居留守を使ったり、電話に出なかったりするなどのケースがあります。こういった悪質なケースの場合、連絡先を契約書に記載してもらっても、なかなか連絡がつきません。

 

しかし、きちと払う気のある債務者にも、固定電話の番号や住所だけだと、なかなか連絡がつかないことがあるのです。連絡がつかないまま時間だけが過ぎてしまうと、その分だけ債権の回収が困難になります。これは、債権者と誠意のある債務者、どちらにとってもマイナスです。

 

・連絡先は「連絡がつくかどうか」「複数」を基準に。固定電話や住所以外も記載

 

皆さんが会社のサービスを契約する時に「連絡のつく連絡先の記載をお願いいたします」と言われることがありませんか。債権の場合も同じで、連絡先は「きちんと連絡のつく連絡先」を書いてもらいましょう。さらに、住所や固定電話などの連絡先の他にすぐに連絡のつくスマートフォンの番号やメールアドレスなどを記載してもらうことが望ましいと言えます。会社自体が債務者の場合は、担当者の名前や部署を確認し、たらい回しされることなくスムーズに連絡がつく状態にしておくことが重要です。

 

債務者の連絡先が多いほど、債権回収はスムーズになります。連絡事項についても、よりスムーズに伝えることができるはずです。

 

債務者に繋がる連絡先という「糸」は契約書に多めに記載してもらうことがポイントです。債務者が法人の場合は担当者を教えてもらうなどの工夫をこらして、たらい回しにされないように一本の糸で繋がるようにしておきましょう。契約書の段間で工夫できる事項です。

 

■まとめ

 

債権の回収を失敗しないためには、契約書に不備がないことが第一です。その上で、債権者が債権トラブルの際にもスムーズに対応できるように布石を打っておくことが必要になります。債権の契約書を作成していれば安心というわけではありません。リスクやトラブル防止の観点から、より穴のない契約書を作成する必要があります。

 

債権の回収を失敗しないための契約書のポイントには、債権者が自分で気をつけることのできるポイントもあります。しかし中には、法律の専門知識がないと難しいポイントもあります。

 

債権者が自分で気をつけることのできるポイントに注意すると共に、リーガルチェックや債権の内容に合った契約書の作成などで、債権の専門家である弁護士を上手く活用することが債権の回収を成功させるためのポイントになります。

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